タイサブリ治療について

はじめに

多発性硬化症(MS)は、本来は自分を守るための「体の防御機能」が、誤って自分自身の脳や脊髄の神経を攻撃するために起こる病気です。MSではさまざまな症状があらわれ、ときには入院が必要になることもあり、学校や仕事など、生活に大きな影響を及ぼします。

現状、MSを完全に治すための治療法はありませんが、MSの治療をすることで再発の回数を減らしたり、再発症状の程度を軽くしたりすることができ、また、将来的な病気の進行を遅らせることも期待できます。

MS治療の目標は、患者さんの負担を減らし、日常生活をより過ごしやすいものにすることです。治療によって、これまであきらめていたことができるようになった方も少なくありません。

このサイトでは、MSに対するタイサブリの作用や、投与前の検査と投与方法、副作用などを紹介しています。
治療を始める前によくお読みいただき、わからないことや不安に思うことがありましたら、遠慮せず医師に相談してください。



タイサブリ治療について

タイサブリは「モノクローナル抗体製剤」に分類される薬です。
タイサブリ治療によって、MSの再発の回数やMRI検査でみられる病巣の数を減らし、身体の障害の進行を遅らせることが期待できます。

なお、次のいずれかに当てはまる方は、タイサブリを使用することができません。

タイサブリの成分に対して過敏な反応を経験したことがある方
進行性多巣性白質脳症(PML)の診断を受けた方、または過去に診断を受けたことがある方
免疫機能に重大な問題がある方、または過去に免疫抑制剤の使用により免疫機能に問題があらわれた方
重篤な感染症にかかっている方

当てはまる場合や、わからないときは、医師に確認してください。



多発性硬化症の原因とタイサブリの作用

<多発性硬化症の原因と考えられていること>

MSの原因ははっきりとはわかっていません。しかし、原因のひとつとして、脳を攻撃する白血球が血管の中を流れているうちに血管壁にくっつき、その後血管壁をすり抜けて脳や脊髄の中に入り、炎症を起こすのではないかと考えられています。

白血球が血管の壁にくっつくには、白血球側にも血管側にも「のり」のような役割をする物質が必要で、これを「細胞接着分子」といいます。

白血球側の「のり」がα4β1(アルファフォーベータワン)インテグリンという物質で、血管側の「のり」がVCAM-1(ブイカムワン)という物質であることがわかっています。
<イメージ図>


<タイサブリの作用>

タイサブリは、白血球側の「のり」を覆って、白血球が血管側の「のり」にくっつくのを阻害します。それによって炎症を起こす白血球が脳や脊髄に入らないようにするはたらきがあります。

<イメージ図>